SSブログ

腰痛と「心理社会的因子」その4 [腰痛]

腰痛と「心理社会的因子」その4
~腰痛診療ガイドライン2012~

前回の続きとなります。

Clinical Question 4 腰痛は心理社会的因子と関係があるか」についてご紹介します。

---以下、ガイドライン本文(一部改変)---
Clinical Question 4 腰痛は心理社会的因子と関係があるか
要約
Grade A 腰痛の発症と遷延に心理社会的因子が関与している.
Grade B 腰痛に精神的要因,特にうつ状態が関与している.

解説
心理社会的因子が,腰痛の遷延に関与することを示唆するエビデンスレベルの高い論文は多い.職業性腰痛を調査した系統的レビューでは,心理社会的因子が腰痛の遷延とその治療成績に影響を与え(LF01736,EV level Ⅰ),腰痛が3ヵ月以内に起こった患者を対象とした系統的レビューでは,腰痛の予後不良因子として,年齢,下肢痛以外に腰痛の既往,うつ状態,仕事上の問題,仕事上の不満などをあげている(LF01609, EV level Ⅰ).
(中略)
精神疾患が慢性腰痛に関与しているか否かについては,うつ病との関連が指摘されている.15歳以上で腰痛が調査時と既往にない約9000例を対象としたインタビュー調査では,慢性腰痛の発症を予測する因子はうつ病,慢性疾患,腰・頚部の外傷の順であった.
(中略)
高齢者の腰痛とうつ状態に関しての調査では,合併症や活動性などの因子とは無関係に日常生活制限を伴う腰痛とうつ状態の関連が示唆された(LF02505. EV level Ⅲ).
また,高齢者の身体機能,握力,認知機能,うつ状態が腰痛の危険因子となるか否かを調査した研究では,良好に維持された身体機能は腰痛の遷延の予防に有用である一方で,うつ状態は70歳以上の腰痛患者の身体機能低下の危険因子となると報告されている(LF02429, EV level Ⅲ).
(中略)
慢性腰痛患者は急性腰痛患者と比較して,仕事に対する恐怖回避信念(fear-avoidance beliefs)1)が有意に高く,この差は1年の追跡調査で消失せず,感情的な悩みが1年後の疼痛と機能障害の予後予測因子に関係していた(LF02418. EV level Ⅲ).
(中略)

1)Fear-avoidance beliefs (恐怖回避信念)
 1983年にLethemらによって提唱された概念であり,特定の患者において痛みが極度に増幅される過程を,fear-avoidance modelを用いて説明している.このモデルでは,ある痛みに対して特別な理由もないのにこれがだんだん悪くなるなどと信じ込むような,破滅的解釈(catastrophizing)をしてしまう者では,痛みを強く恐れて逃避する傾向(fear-avoidance)がみられ,結果として廃用性の機能障害やうつ状態を引き起こし,さらに痛みが増強する負のサイクルに入り込んでしまうことを指摘している.
---ガイドライン本文 おわり---

注)本文中の「LFXXXXX」は文献番号です。

次回は、「Clinical Question 5 腰痛の自然経過はどのようであるか」についてご紹介します。

おわり

文献
1)日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,腰痛診療ガイドライン策定委員会編:腰痛診療ガイドライン2012,南江堂,2012.
2)竹下克志:腰痛診療ガイドライン,ペインクリニック,34(1):7-14,2013.

腰痛と「心理社会的因子」
その1
その2
その3


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。